片端づつ見るに か 014 ★☆☆
片端づつ見るにかくさまざまなる物どもこそはべりけれとて 原文 読み 意味 帚木第2章06/源氏物語
片端づつ見るに かくさまざまなる物どもこそはべりけれとて 心あてに それかかれかなど問ふなかに 言ひ当つるもあり もて離れたることをも思ひ寄せて疑ふもをかしと思せど 言少なにてとかく紛らはしつつ とり隠したまひつ
かたはし-づつ/みる/に かく/さまざま/なる/もの-ども/こそ/はべり/けれ/とて こころあて/に それ/か/かれ/か/など/とふ/なか/に いひあつる/も/あり もてはなれ/たる/こと/を/も/おもひよせ/て/うたがふ/も/をかし/と/おぼせ/ど ことずくな/にて/とかく/まぎらはし/つつ とり/かくし/たまひ/つ
ちらちら拾い読みしながら、よくまあいろいろな手紙があるものですねと言って、当て推量で、あの人の、それともあの方のなどと問ううちに言い当てたのもあり、お門違いな状況までも想定して勘ぐるのも興味こそわいたが、言葉少なにとかくはぐらかしながらとり隠してしまわれた。
大構造(ど…言少なにて…紛らはしつつとり隠したまひつ/五次)& 係り受け
〈[頭中将]〉片端づつ見るに @かくさまざまなる〈物ども〉こそはべりけれ@とて 心あてに @それかかれかなど@問ふなかに 言ひ当つるもあり @もて離れたることをも思ひ寄せて〈疑ふ〉もをか しと思せど@ 〈[光源氏]〉言少なにてとかく紛らはしつつ とり隠したまひつ
〈主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]: 補 /: 挿入 @・@・@・@:分岐
「疑ふ」は緑だが、「言ひ当つるもあり」と揃えるために青とした。
「言ひ当つるもあり」:連用中止
「怨ずれば/02-012」→026「言少なにてとかく紛らはしつつとり隠したまひつ」
帚木 注釈 第2章06
片端づつ見る 02-014
手紙の全文を読まずに、部分部分を流し読みすること。
心あて 02-014
当てずっぽう。
疑ふもの「も」 02-014
この「も」は「言いあつるもあり」の「も」を受ける。後には「ありて」などの省略がある。
ここがPoint / 文法用語の説明
連用中止法
「問ふなかに言ひ当つるもあり」は係る先がないので、「終止形で文が終わる」と考えるか、「連用形で文は終わるが意味的に次に続く」と考えるかの二択となる。文の終止であれば、「片端づつ見るに…言ひ当つるもあり」は文に欠落要素がないため、挿入となる。「もて離れたる」以下と位相が異なってしまう。しかし、「片端づつ見る」の結果が「もて離れたる」に影響を与えているので、意味的につながりのある連用終止と考えると自然である。なおまた、連用終止の場合、その後ろに重要表現が出てくる。この場合「言ひ当つる」ことよりも、「もて離れたる」に光源氏の関心が向いている。文のストレスからも連用中止法を支持する。
附録:耳からの情報処理(語りの対象 & 構造型)
語りの対象:頭中将/物(手紙)/光源氏
《片端づつ見るに・かくさまざまなる物どもこそはべりけれとて》A・B
ちらちら拾い読みしながら、よくまあいろいろな手紙があるものですねと言って、
《心あてに それかかれかなど問ふなかに》C
当て推量で、あの人の、それともあの方のなどと問ううちに、
《言ひ当つるもあり・もて離れたることをも思ひ寄せて疑ふもをかしと思せど》D・E
言い当てたのもあり、お門違いな状況までも想定して勘ぐるのも興味こそわいたが、
《言少なにてとかく紛らはしつつ とり隠したまひつ》F
言葉少なにとかくはぐらかしながらとり隠してしまわれた。
分岐型・中断型・分配型:A<(B<)C<D<|*C<E<F:A<C<D、B<C、*C<E<F CはAの言い換えに近い
A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
※係り受けは主述関係を含む
〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用