うち合ひてすぐれた 039 ★☆☆
うち合ひてすぐれたらむもことわりこれこそはさるべきことと 原文 読み 意味 帚木第3章08/源氏物語
うち合ひてすぐれたらむもことわり これこそはさるべきこととおぼえて めづらかなることと心も驚くまじ
うちあひ/て/すぐれ/たら/む/も/ことわり これ/こそ/は/さるべき/こと/と/おぼエ/て めづらか/なる/こと/と/こころ/も/おどろく/まじ
エ:や行の「え」
(頭中将)立ち居も気品も家柄に似つかわしいく上々なのが世のことわり、これなどはそうあるのが当然と思われるから、めずらしいことだと心中驚くにあたらない。
大構造(と…も驚くまじ/三次)& 係り受け
〈[血統と評判]〉うち合ひてすぐれたらむもことわり 〈これ〉こそはさるべき こととおぼえて めづらかなることと〈心〉も驚くまじ
〈主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]: 補 /: 挿入 @・@・@・@:分岐
「さるべきこととおぼえて」「めづらかなることと心も驚くまじ」:並列
物語の深部を支える重要語句へのアプローチ
うち合ひ:何と何がぴったりか
それにふさわしい(/02-038の注参照)。何と何が「うち合」ふのかが問題で、諸注は前に「うち合ひ」と称された「もとの品時世のおぼえ」をもってくるが、それは娘ではなく、娘が属する家の話。また「もとの品時世のおぼえ」と並列関係にある「やむごとなき」を無視するのも、文構造を無視した解釈である。ここは家柄よく世評もすぐれたご令嬢なら必ず備わっておくべき資質である「(内々の)もてなしけはひ」である。この二つともにすぐれていて当然だとの論理展開である。
帚木 注釈 第3章08
さるべきこと 02-039
そうあるのが当然。
ここがPoint / 文法用語の説明
中止法とは
中止法を中にはさんだ一文「A|B」と二つの文「A B」とは、情報の流れとしては「A=A、B=B」で変わりはない。しかし、中止法は「前の情報より後の情報が重要である」とのメッセージをふくむのに対して、二つの文に情報の優劣はない。この点、両者は様相を異にする。
中止法は慣性の法則と考えるとわかりやすい。それまで情報が流れていたものが、急にブレーキがかかるので前につんのめる。情報は移動しないが、重心が前方に移動する分、情報の重要度が増すのである。文学的表現では余韻という。
附録:耳からの情報処理(語りの対象 & 構造型)
語りの対象:その娘/発言者(頭中将)
《うち合ひてすぐれたらむもことわり》A
立ち居も気品も家柄に似つかわしいく上々なのが世のことわり、
《これこそは・さるべきこととおぼえて・めづらかなることと心も驚くまじ》B・C・D
これなどはそうあるのが当然と思われるから、めずらしいことだと心中驚くにあたらない。
分岐型・中断型:A<|B<C+D:A、B<C+D
A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
※係り受けは主述関係を含む
〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用