容貌をかしくうちお 021
- 1. 帚木 原文 かな書き 現代語訳 第2章13
- 1.1. はかなきすさび:限定用法と叙述用法
- 1.2. 帚木 注釈 第2章13
- 1.3. 大構造(に…ゆゑづけてし出づることもあり/四次
〈[女性]〉容貌をかしくうちおほどき若やかにて 紛るることなきほど はかなきすさびをも 人まねに心を入るることもあるに おのづから一つゆゑづけてし出づることもあり
〈主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]: 補 /: 挿入 @・@・@・@:分岐
「親など立ち添ひもてあがめて 生ひ先籠れる窓の内なるほどは ただ片かどを聞き伝へて 心を動かすこともあめり/02/020」とこの文は並列。従って「紛るることなきほどは」の方が対の関係がはっきりする(別本は「は」が入る)。なお、色分けも対句を意識した。
係り受け&主語述語
帚木 原文 かな書き 現代語訳 第2章13
容貌をかしくうちおほどき若やかにて 紛るることなきほど はかなきすさびをも 人まねに心を入るることもあるに おのづから一つゆゑづけてし出づることもあり
かたち/をかしく/うちおほどき/わかやか/にて まぎるる/こと/なき/ほど はかなき/すさび/を/も ひとまね/に/こころ/を/いるる/こと/も/ある/に おのづから/ひとつ/ゆゑづけ/て/しいづる/こと/も/あり
(頭中将)姿形が華やぎおっとりとしたたちで若々しくて、他に専念すべきことがないうちは、ちょっとした技芸でも人真似ながら身を入れることもあって、おのずと一つくらいは堂に入った風にやってのけたりするものですよ。
物語の深部を支える重要語句へのアプローチ
はかなきすさび:限定用法と叙述用法
たわいのない芸事。和歌や琴など芸事一般に対して。立派な芸事と、立派でない芸事を対比しているのではない。妻選びの要件として芸事は必須でなく、あくまで心情が大事だとの論旨。従って、芸事一般が内実を表さぬはかないものなのだ。すなわち「はかないものである芸事」という形容詞の叙述用法。
帚木 注釈 第2章13
うちおほどき 02-021
のんびりしている。
紛るることなきほど 02-021
「ほど」を程度と解釈すると、他に気持ちをむけず一心不乱にと読める。「ほど」を時間と解釈すると、他にやることがない間はと訳せる。
心を入るる 02-021
熱心にする。
ゆゑづけて 02-021
その道で相当なものになること。
附録:耳からの情報処理(語りの対象 & 構造型)
語りの対象:世の女
《容貌をかしくうちおほどき若やかにて・紛るることなきほど》A・B
姿形が華やぎおっとりとしたたちで若々しくて、他に専念すべきことがないうちは、
《はかなきすさびをも》C
ちょっとした技芸でも、
《人まねに心を入るることもあるに》D
人真似ながら身を入れることもあって、
《おのづから一つゆゑづけてし出づることもあり》E
おのずと一つくらいは堂に入った風にやってのけたりするものですよ。
分岐型:A+B<C<D+E:A+B<C<D+E
A<B:AはBに係る Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
※係り受けは主述関係を含む
〈直列型〉<:直進 #:倒置 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
〈中断型〉φ:独立文 [ ]:挿入 |:中止法
〈反復型〉~AX:Aの置換X A[,B]:Aの同格B 〈分配型〉A<B|*A<C ※直列型以外は複数登録、直列型は単独使用
情報の階層&係り受け
大構造(に…ゆゑづけてし出づることもあり/四次〈[女性]〉容貌をかしくうちおほどき若やかにて 紛るることなきほど はかなきすさびをも 人まねに心を入るることもあるに おのづから一つゆゑづけてし出づることもあり
〈主〉述:一朱二緑三青四橙五紫六水 [ ]: 補 /: 挿入 @・@・@・@:分岐
「親など立ち添ひもてあがめて 生ひ先籠れる窓の内なるほどは ただ片かどを聞き伝へて 心を動かすこともあめり/02/020」とこの文は並列。従って「紛るることなきほどは」の方が対の関係がはっきりする(別本は「は」が入る)。なお、色分けも対句を意識した。
係り受け&主語述語
「紛るることなきほど」→「心を入るることもある」