そのうちとけてかた 帚木02章04
原文 読み 意味
そのうちとけてかたはらいたしと思されむこそゆかしけれ おしなべたるおほかたのは 数ならねど程々につけて書き交はしつつも見はべりなむ おのがじし恨めしき折々 待ち顔ならむ夕暮れなどのこそ見所はあらめと怨ずれば
02012/難易度:☆☆☆
その/うちとけ/て/かたはらいたし/と/おぼさ/れ/む/こそ/ゆかしけれ おしなべ/たる/おほかた/の/は かず/なら/ね/ど/ほどほど/に/つけ/て/かきかはし/つつ/も/み/はべり/な/む おのがじし/うらめしき/をりをり まちがほ/なら/む/ゆふぐれ/など/の/こそ/みどころ/は/あら/め/と/ゑんずれ/ば
(頭中将)その心を許した読まれては恥ずかしいとお思いなのが見たいんですよ。変わりばえしないありふれたのなら、人数にも入らぬわたくしでも分相応な相手とやりとりしながら読みますとも。お互い不実をかこつ折りだとか、人待ち顔でいよう夕暮れなんかの手紙だとか読みごたえはありましょうと恨めしがったところ、
文構造&係り受け
主語述語と大構造
- と怨ずれば 三次元構造
@そのうちとけてかたはらいたしと〈[光源氏]〉思されむこそゆかしけれ おしなべたるおほかた〈の〉は 数ならねど程々につけて書き交はしつつも見はべりなむ おのがじし恨めしき折々 待ち顔ならむ夕暮れなどのこそ見所はあらめ 〈[頭中将]〉と@怨ずれば
助詞と係り受け
そのうちとけてかたはらいたしと思されむこそゆかしけれ おしなべたるおほかたのは 数ならねど程々につけて書き交はしつつも見はべりなむ おのがじし恨めしき折々 待ち顔ならむ夕暮れなどのこそ見所はあらめと怨ずれば
「おしなべたるおほかたのは」→「(書き交はしつつも)見はべりなむ」
「ゆかしがれば/02010」→020「許したまはね(ば)/02011」→022「(見所はあらめと)怨ずれ(ば)」→「とり隠したまひつ/02014」
古語探訪
うちとけて 02012
安心しきって、何でも書いてある手紙。
かたはらいたし 02012
そばで読まれて恥ずかしくなるような内容。
ゆかしけれ 02012
読みたい。
おしなべたる 02012
内容が平凡なこと。
おほかたの 02012
相手ややりとりの状況が平凡なこと。
数ならねど 02012
貴人ではないという謙譲語。人数に入らない。
程々につけて 02012
自分の身分と相手の身分に応じて。
見はべりなむ 02012
見られましょう。未来にきっとそうなるという確信、すでに見ているという経験を語る解説があるが間違いである。
おのがじし 02012
男の方も女の方もそれぞれに。
恨めしき折々 02012
相手の不実を恨む手紙。左馬頭の語る指を喰う女の先触れになっている。「(言=事)構造」。
待ち顔ならむ夕暮れ 02012
夕暮れに待ち焦がれた女が男に出す誘いの手紙。左馬頭の語る木枯しの女の先触れになっている。「(言=事)構造」。
怨ずれ 02012
そういうものが見たいのだと、うらみごとを言う。