その品々やいかにい 帚木02章21
原文 読み 意味
その品々やいかに いづれを三つの品に置きてか分くべき 元の品高く生まれながら 身は沈み位みじかくて人げなき また直人の上達部などまでなり上り 我は顔にて家の内を飾り人に劣らじと思へる そのけぢめをばいかが分くべきと 問ひたまふほどに 左馬頭藤式部丞御物忌に籠もらむとて参れり
02029/難易度:☆☆☆
その/しなじな/や/いかに いづれ/を/みつ/の/しな/に/おき/て/か/わく/べき もと/の/しな/たかく/むまれ/ながら み/は/しづみ/くらゐ/みじかく/て/ひとげなき また/なほびと/の/かむだちめ/など/まで/なり/のぼり われはがほ/にて/いへ/の/うち/を/かざり/ひと/に/おとら/じ/と/おもへ/る その/けぢめ/をば /いかが/わく/べき/と とひ/たまふ/ほど/に ひだり-の-むまのかみ/とう-しきぶのじよう/おほむ-ものいみ/に/こもら/む/とて/まゐれ/り
(光源氏)その上中下とはどうなの。誰をどこにおいて区分すればいいんだ。もともと高い身分に生まれながら、身はおちぶれ位が低くくて人以下の暮らしをしてたり、また普通の身分から上達部なんかにまでなり上がり、得意満面で屋敷内を飾りたて人に負けまいと気を張るのと、その境目はどう分けたらよいのか、と光の君が問うているところに、左馬頭と藤式部丞が物忌みで籠ろうとして参内してきた。
文構造&係り受け
主語述語と大構造
- に…とて参れり 六次元構造
@その〈品々〉やいかに 〈[頭中将よ]〉いづれを三つの品に置きてか分くべき 〈[女]〉元の品高く生まれながら 〈身〉は沈み〈位〉みじかくて人げなき また〈直人〉の上達部などまでなり上り 我は顔にて家の内を飾り人に劣らじと思へる そのけぢめをばいかが分くべきと@ 〈[光源氏]〉問ひたまふほどに 〈左馬頭藤式部丞〉@御物忌に籠もらむ@とて参れり
助詞と係り受け
その品々やいかに いづれを三つの品に置きてか分くべき 元の品高く生まれながら 身は沈み位みじかくて人げなき また直人の上達部などまでなり上り 我は顔にて家の内を飾り人に劣らじと思へる そのけぢめをばいかが分くべきと 問ひたまふほどに 左馬頭藤式部丞御物忌に籠もらむとて参れり
「人げなき」と「思へる」は「けぢめ」に係るため連体形。
「置きてか分くべき」は係助詞「か」により結びは連体形。
「いかが分くべき」の「いかが」は元「いかにか」であり、係助詞「か」が隠れているため、結びは連体形となっている。
「元の品高く生まれながら 身は沈み位みじかくて人げなき」「直人の上達部などまでなり上り 我は顔にて家の内を飾り人に劣らじと思へる」(並列)→「そのけぢめ」
「そのけぢめ」:「元の品…人げなき」と「直人の…思へる」との「けぢめ」
古語探訪
その品々やいかに 02029:論争の濫觴
光源氏の提案は、カテゴリカルなもので議論のための話題作りという感じがする。実際、この質問内容から、かつて栄光にあった貴族の没落や、地位は高くないが資産のある受領など、品という静的な区分から、品をまたがる動的な話題へと変わってゆく。夕顔・若紫など、生涯にわたり光源氏に影響をおよぼす女性の多くが、この没落貴族であることを考えると、この議論はその予兆となっている点で重要である。雨夜の品定め中、光源氏がまともに発言したのはこの個所だけであり、そのことからも作者はここに力点を置いていることが想像される。
分くべき 02029
他動詞で、分ける。「分かるべき/02026」は自動詞。
位みじかくて 02029
身分が低い。
直人 02029
貴族の出でない人。