よろづのことになど 帚木11章03
- 1. 原文 読み 意味
- 1.1. 大構造と係り受け
- 1.1.1. 古語探訪
- 1.1.1.1. などかは 02118
- 1.1.1.2. さても 02118
- 1.1.1.3. とおぼゆる折から 02118
- 1.1.1.4. よしばみ 02118
- 1.1.1.5. 情け立たざらむ 02118
- 1.1.1.6. 目やすかるべき 02118
- 1.1.1.7. 知れらむこと 02118
- 1.1.1.8. もてなし 02118
- 1.1.1.9. 言はまほしからむこと 02118
- 1.1.1.10. ふし 02118
- 1.1.1.11. 過ぐす 02118
- 1.1.1.12. あべかりけること 02118
- 1.1.1.13. 人一人の御ありさま 02118
- 1.1.1.14. これ 02118
- 1.1.1.15. ものしたまひ 02118
- 1.1.1.16. いづ方により果つともなく 02118
- 1.1.1.17. あやしきこと 02118
- 1.1.1.18. 明かし 02118
- 1.1.1. 古語探訪
- 1.1. 大構造と係り受け
原文 読み 意味
よろづのことに などかは さても とおぼゆる折から 時々 思ひわかぬばかりの心にては よしばみ情け立たざらむなむ目やすかるべき すべて 心に知れらむことをも 知らず顔にもてなし 言はまほしからむことをも 一つ二つのふしは過ぐすべくなむあべかりける と言ふにも 君は 人一人の御ありさまを 心の中に思ひつづけたまふ これに足らずまたさし過ぎたることなくものしたまひけるかな と ありがたきにも いとど胸ふたがる いづ方により果つともなく 果て果てはあやしきことどもになりて 明かしたまひつ
02118/難易度:☆☆☆
よろづ/の/こと/に などかは さても と/おぼゆる/をりから ときどき おもひ/わか/ぬ/ばかり/の/こころ/にて/は よしばみ/なさけだた/ざら/む/なむ/めやすかる/べき すべて こころ/に/しれ/ら/む/こと/を/も しらずがほ/に/もてなし いは/まほしから/む/こと/を/も ひとつ/ふたつ/の/ふし/は/すぐす/べく/なむ/あ/べかり/ける と/いふ/に/も きみ/は ひと/ひとり/の/おほむ-ありさま/を こころ/の/うち/に/おもひ/つづけ/たまふ これ/は/たら/ず/また/さし-すぎ/たる/こと/なく/ものし/たまひ/ける/かな と/ありがたき/に/も いとど/むね/ふたがる いづかた/に/より/はつ/と/も/なく はてはて/は/あやしき/こと-ども/に/なり/て あかし/たまひ/つ
何事でもどうしてそんなことをそのままでよいのにとつい思えることが多い今日この頃ですから、時々の状況を見分けられぬ程度の頭では、気取ったり思わせぶったりはしない方が見よいでしょう。総じて、心に知りつくしていることでも知らぬ顔でふるまい、言いたいことがあっても一つ二つくらいは黙って見過ごすくらいでいるのがよろしいでしょうよ」と言うにも、若君はただ一人の御有様を心の中で思いつづけておられる。「左馬頭の論に不足もせず、また行過ぎることもなくいらっしゃることだな」と、たぐいない人だと思うにつけ、ますます胸がふさがる。どちらの方向に議論が行き着くというでもなく、とうとうしまいは猥談などになって夜を明かしてしまわれた。
大構造と係り受け
よろづのことに などかは さても とおぼゆる折から 時々 思ひわかぬばかりの心にては よしばみ情け立たざらむなむ目やすかるべき すべて 心に知れらむことをも 知らず顔にもてなし 言はまほしからむことをも 一つ二つのふしは過ぐすべくなむあべかりける と言ふにも 君は 人一人の御ありさまを 心の中に思ひつづけたまふ これに足らずまたさし過ぎたることなくものしたまひけるかな と ありがたきにも いとど胸ふたがる いづ方により果つともなく 果て果てはあやしきことどもになりて 明かしたまひつ
◇ 「時々」→「思ひわかぬ」(前節の流れから状況判断と考える)
◇ 「すべて」→「心に知れらむことをも知らず顔にもてなし」「言はまほしからむことをも一つ二つのふしは過ぐす/並列)→「べくなむあべかりける」
古語探訪
などかは 02118
「ありなむ」などの省略、そんな風にしなくともよいものを。
さても 02118
「ありなむ」などの省略、そのままでよい。
とおぼゆる折から 02118
ついついそんな風に思われる時があるので。「おぼゆる」は自発。「から」は原因。
よしばみ 02118
よくみせる。
情け立たざらむ 02118
愛情をみせようとしない。
目やすかるべき 02118
見よい。
知れらむこと 02118
知っていそうなこと。ラ行四段動詞「知る」の已然形「知れ」+完了「り」の未然形「ら」+推量「む」の連体形「む」+「こと」。
もてなし 02118
ふるまう。取り計らう。
言はまほしからむこと 02118
言いたいこと。
ふし 02118
機会。
過ぐす 02118
見逃す。
あべかりけること 02118
「あるべかりけること」の省略形、必ずそうあるのがよいと思われた。
人一人の御ありさま 02118
藤壺のこと。
これ 02118
左馬頭の考え。特に「すべて 心に知れらむことをも 知らず顔にもてなし 言はまほしからむことをも 一つ二つのふしは過ぐすべくなむあべかりける」
ものしたまひ 02118
いらっしゃる。
いづ方により果つともなく 02118
理想の女性の結論がどこにも、誰の議論にも落ち着くことなく。
あやしきこと 02118
おそらく猥談であろう。
明かし 02118
夜を明かす。