ともかくも違ふべき 帚木05章21
原文 読み 意味
ともかくも 違ふべきふしあらむを のどやかに見忍ばむよりほかに ますことあるまじかりけり と言ひて わが妹の姫君は この定めにかなひたまへりと思へば 君のうちねぶりて言葉まぜたまはぬを さうざうしく心やましと思ふ
02082/難易度:☆☆☆
ともかくも たがふ/べき/ふし/あら/む/を のどやか/に/み/しのば/む/より/ほか/に ます/こと/ある/まじかり/けり と/いひ/て わが/いもうと/の/ひめぎみ/は この/さだめ/に/かなひ/たまへ/り/と/おもへ/ば きみ/の/うち-ねぶり/て/ことば/まぜ/たまは/ぬ/を さうざうしく/こころやまし/と/おもふ
(頭中将)とにもかくにも、気のそまぬ点があろうとゆったりかまえ辛抱するよりほかいい手立てはないでしょうねと言って、自分の妹君である葵の上はこの結論通りでおられると思うが、光の君は狸寝入りして言葉をお挟みにならないので頭中将はじれったくいらだたしく思う。
文構造&係り受け
主語述語と大構造
- を…と思ふ 五次元構造
〈[男]〉ともかくも 違ふべきふしあらむを のどやかに見忍ばむよりほかに 〈ますこと〉あるまじかりけり 〈[頭中将]〉と言ひて わが妹の姫君は この定めにかなひたまへりと思へば 〈君〉のうちねぶりて言葉まぜたまはぬを さうざうしく心やましと思ふ
助詞と係り受け
ともかくも 違ふべきふしあらむを のどやかに見忍ばむよりほかに ますことあるまじかりけり と言ひて わが妹の姫君は この定めにかなひたまへりと思へば 君のうちねぶりて言葉まぜたまはぬを さうざうしく心やましと思ふ
「ともかくも」→「見忍ばむ」
古語探訪
のどやかに見忍ばむよりほかにますことあるまじかりけり 02082
左馬頭の発言「恨むべからむふしをも憎からずかすめなさばそれにつけてあはれもまさりぬべし多くはわが心も見る人からをさまりもすべし/02076・/02077」を受ける。ただし、左馬頭は女に耐えることを要請したのに対して、頭中将は男である光源氏に忍耐を要請した点で、得手勝手な論になっている。
うちねぶり 02082
寝たふり。
さうざうしく 02082
反応のない点へのもの足りなさ。
心やまし 02082
劣等意識と結びついた不快感をあらわす。この提案を受け入れれば光源氏と妹葵の上の夫婦仲がうまくいくと思い、日頃の劣等感も取り消せるはずであったのが、とりあってもらえず、頭中将は不快に感じている。