いとさばかりならむ 帚木02章16
目次
原文 読み 意味
いとさばかりならむあたりには 誰れかはすかされ寄りはべらむ
02024/難易度:☆☆☆
いと/さばかり/なら/む/あたり/に/は たれ/かは/すかさ/れ/より/はべら/む
(頭中将)まったくそんなつまらないところへは、誰がだまされて言い寄りましょう。
文構造&係り受け
主語述語と大構造
- には…かはすかされ寄りはべらむ 二次元構造
いと〈さ=片かどもなき〉ばかりならむあたりには 〈誰れ〉かはすかされ寄りはべらむ
助詞と係り受け
いとさばかりならむあたりには 誰れかはすかされ寄りはべらむ
「さばかりならむあたり」の「さ」:「片かどもなき人/02023」を受ける
「誰れかは」:反語
古語探訪
いとさばかりならむあたりには誰れかすかされ寄りはべらむ 02024:頭中将の生真面目さ
先の頭中将の論は、仲人に言いくるめられるので、実際に女と接しないと欠点は見えてこないというものであった。この論からすれば、取り柄がない女に誰も言い寄らないというのはおかしい。取り柄がなくても仲人に騙されるのだから。ただ、頭中将の頭の中では、全く取り柄のない女など下賎な身以外に考えられず、下賎な女には、仲人がどうごまかそうが、はなから相手にしないとの結論があり、この発言になったのだろう。頭中将は恋の道では先輩風を吹かせたいがために、光源氏の前では恰好をつけていたい。しかし、光源氏の質問は議論の出発点を混ぜ返すものであり、これにまじめに答えようとして、あたふたしている姿が浮かぶ。