艶にもの恥ぢして恨 帚木05章04

2021-04-30

〈テキスト〉を紡ぐ〈語り〉の技法

文をまたぐ係り受け 02065

「をり」の係る先を、どうしてこれまで理解されなかったのか。これこそが、古文と現代文の構造的な違いなのである。現代文は文を単位とし、係り受けはそれを超えないという暗黙の規則に縛られる。しかし、古文にはそもそも「。」がないから、文単位という考え方がない。特に、源氏物語は語りが基本である。例えば、女子高生の電話の内容を「。」を打って文単位に区切ったとしても、係り受けが一文内に収まるかというと、そうはならないだろう。係り受けは(現代文でいうところの)文を超えるという意識で原文にあたることが大切なのだ。このサイトで「、」「。」やカギ括弧をつけない理由は、無意識のうちに現代文の解釈方法に縛られるのを避けるためでもある。実際には、それらをうつ明確な基準がないから、恣意的な適用となるのが嫌だというに過ぎない。

耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉

語りの対象:妻候補

分岐型・中断型:A→B→C→|D→E+F→G:A→B→C、D→E+F→G

艶にもの恥ぢして・恨み言ふべきことをも見知らぬさまに忍びて・上はつれなくみさをづくり》A・B・C
色気たっぷりと妙に恥じらって、恨みを言うべき事態にもひとごとみたいに我慢して外目には素知らぬふうに妻たる役割を演じるが、


心一つに思ひあまる時は・言はむかたなくすごき言の葉あはれなる歌を詠みおき・しのばるべき形見をとどめて》D・E・F
心ひとつに思いあまる時には、言いようもなく心に沁みる文句や情の濃い歌を詠みおき女のことを偲ばずにおかない形見をわざと残して、


深き山里世離れたる海づらなどにはひ隠れぬるをり》G
深い山里や辺鄙な海べなどにひっそりと身を隠してしまうそんな折りに、

  • 〈直列型〉:修飾 :倒置 
  • 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
  • 〈中断型〉//:挿入 :文終止・中止法
  • 〈反復型〉~AX:Aの言換えX ,AB:Aの同格B
  • 〈分配型〉A→B*A→C

 A→B:AはBに係る
 Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む
 ※直列型は、全型共通のため単独使用に限った

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