わが心あやまちなく 帚木05章20
目次
原文 読み 意味
わが心あやまちなくて見過ぐさば さし直してもなどか見ざらむとおぼえたれど それさしもあらじ
02081/難易度:☆☆☆
わが/こころ/あやまち/なく/て/みすぐさ/ば さしなほし/て/も/などか/み/ざら/む/と/おぼエ/たれ/ど それ/さしも/あら/じ
(頭中将)こちらに非がなくて事荒立てないのであれば、無理に性根を叩き直してでも一生添い遂げたいと思うものだが、それはできない相談だ。
文構造&係り受け
主語述語と大構造
- ど…さしもあらじ 四次元構造
〈[男]〉わが心あやまちなくて見過ぐさば さし直してもなどか見ざらむとおぼえたれど 〈それ〉さしもあらじ
助詞と係り受け
わが心あやまちなくて見過ぐさば さし直してもなどか見ざらむとおぼえたれど それさしもあらじ
「それ」:指示語(「さ」と同じく「さし直す」を受ける)と考えても発語の辞と考えても意味的にはかわらない。
古語探訪
見過ぐす 02081
当座は大目に見る。「頼もしげなき疑ひ」をもってすぐに離縁することにしない。
さし直す 02081
無理に矯正する。
などか見ざらむ 02081
反語で、添い遂げるの意味。
それさしもあらじ 02081
人の心を強制して直すことはできない。
〈テキスト〉〈語り〉〈文脈〉の背景
頭中将が諦観に至る曲折
・同じくはわが力入りをし直しひきつくろふべき所なく 心にかなふやうにもや/02052
・ただひたふるに子めきて柔らかならむ人を とかくひきつくろひてはなどか見ざらむ 心もとなくとも直し所ある心地すべし/02059
・すこし後れたる方あらむをもあながちに求め加へじ/02064
左馬頭にことごとく論破された結果、当初から百八十度違う女性観になっている点に注意したい。