事が中になのめなる 帚木04章11

2021-04-30

〈テキスト〉を紡ぐ〈語り〉の技法

用言並列の規則 02057

並列する最後以外の用言は連用形。従って「知り過ぐし」「あり」は連用形。最後の並列は次に続く形であり、「方」という体言に続くので「進める」は連体形となる。

主述関係と修飾関係の上位区分 02057

古文の構造で一番大切なことは、そこで切れる語(off語)なのか、後ろに続く語(on語)なのかの区別することである。源氏物語においてoff語が現れる頻度は極めて少ないので、引き続いての作業として、on語はどの語(to語)にかかるのか、(あるいはどの語(get語)がそれを受け止めるのか)を考えることになる。
古文を読む心得として、主語述語の関係を探すことからはじめることが多いが、この語がどこに続くのかを考えることを優先すべきである。それがわかった段階で、意味が特定され、必要なら主格か、連用格か、連体格かの区別がつけられる。しかしながら、この文の「進める方なし」の「進める方」と「なし」の関係はどうであろうか。「進める方はなし」と考えれば「は」は係り助詞だから修飾語となり、自然な古文ではないが「進める方がなし」と「が」を補えば、主格の格助詞だから主語と考えることになる。しかし、原文は「方なし」であって、そんな区別を必要としていないのだ。「どこに係るか、それが問題だ」
実際問題として、日常の言語活動において、主語述語なんてことを考えたりしない。言い終えたか、まだ言い終えていないか、係りと受けという意識は、頭の隅に残っているものなのだ。源氏物語の語りにおいても、これは同じであろう。主語述語なんて意識はなかろうし、頻度的にも修飾関係が圧倒的に多く現れる。主語述語にとらわれるべきではない。

耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉

語りの対象:諸事例高貴な男世話する女発言者(左馬頭)

分岐型:A→B→C+D+E→F→G:A→B→C+D+E→F→G

事が中に・なのめなるまじき人の後見の方は》A・B
様々な事例の中でも特に、いい加減ではすまない高貴な方の世話をする場合には、


もののあはれ知り過ぐし・はかなきついでの情けあり・をかしきに進める》C・D・E
何かと深く感じ入り過ぎたり、実のないうわべの思いやりをみせたり、風流趣味に偏したりする


方なくてもよかるべし・と見えたるに》F・G
方面は、なくてもよさそうに思われるものの、

  • 〈直列型〉:修飾 :倒置 
  • 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
  • 〈中断型〉//:挿入 :文終止・中止法
  • 〈反復型〉~AX:Aの言換えX ,AB:Aの同格B
  • 〈分配型〉A→B*A→C

 A→B:AはBに係る
 Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
 ※係り受けは主述関係を含む
 ※直列型は、全型共通のため単独使用に限った

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