なまなまの上達部よ 帚木03章04
原文 読み 意味
なまなまの上達部よりも 非参議の四位どもの 世のおぼえ口惜しからず もとの根ざし卑しからぬ やすらかに身をもてなしふるまひたる いとかはらかなりや 家の内に足らぬことなどはたなかめるままに 省かずまばゆきまでもてかしづける女などの おとしめがたく生ひ出づるも あまたあるべし
02035/難易度:☆☆☆
なまなま/の/かむだちめ/より/も ひ-さむぎ/の/しゐ-ども/の よ/の/おぼエ/くちをしから/ず もと/の/ねざし/いやしから/ぬ やすらか/に/み/を/もてなし/ふるまひ/たる いと/かはらか/なり/や いへ/の/うち/に/たら/ぬ/こと/など/はた/なか/める/まま/に はぶか/ず/まばゆき/まで/もて-かしづけ/る/むすめ/など/の おとしめ-がたく/おひいづる/も あまた/ある/べし
(頭中将)なまなかな上達部よりも、参議扱いの四位の身で、世評も不満なく、生まれ育ちの卑しくないのが、鷹揚にかまえ日を暮らすのは、何とさっぱり気持ちがよいことでしょう。受領でも参議格でも家の中に不足などあろうはずのないままに、贅を尽くしまぶしいまで慈しんでき娘なんかが、見下しがたく生い立つことも、相当数にのぼるはずです。
文構造&係り受け
主語述語と大構造
- も…あるべし 四次元構造
なまなまの上達部よりも 〈非参議の四位ども〉の 〈世のおぼえ〉口惜しからず もとの〈根ざし〉卑しからぬ〈[のが]〉 やすらかに身をもてなしふるまひたる〈[のは]〉 いとかはらかなりや 〈[参議格]〉家の内に足らぬ〈ことなど〉はたなかめるままに 省かずまばゆきまでもてかしづける〈女など〉の おとしめがたく〈生ひ出づる〉も あまたあるべし
助詞と係り受け
なまなまの上達部よりも 非参議の四位どもの 世のおぼえ口惜しからず もとの根ざし卑しからぬ やすらかに身をもてなしふるまひたる いとかはらかなりや 家の内に足らぬことなどはたなかめるままに 省かずまばゆきまでもてかしづける女などの おとしめがたく生ひ出づるも あまたあるべし
02034と02035は対の関係。従って、「省かずまばゆきまでもてかしづける」の主体は参議格の貴族であって、受領は含めない。
「非参議の四位どもの 世のおぼえ口惜しからず もとの根ざし卑しからぬ」:AのB連体(「の」同格)
「世のおぼえ口惜しからず」「もとの根ざし卑しからぬ」:並列
「世のおぼえ口惜しからず もとの根ざし卑しからぬ」「やすらかに身をもてなしふるまひたる」:主述
「やすらかに身をもてなしふるまひたる」「いとかはらかなりや」:主述
「女などのおとしめがたく生ひ出づる」:AのB連体形(「の」主格)
古語探訪
なまなまの 02035
うだつのあがらぬ。
非参議の四位 02035
四位でありながら、三位以上の役割である参議になり朝政にあたる人。参議以上はその地位につける家柄がほぼ固定されていた。その中でも流動性がありえたのが非参議の四位。三位以上の公卿は上流貴族で生まれにによって決まっている。それ以下の中流貴族の中に生まれながら上々のクラスの公卿とされた。
かはらかなり 02035
爽快であること。
なかめる 02035
ないらしい。
省かず 02035
時間・費用・儀式などを省略せず。