また元はやむごとな 帚木03章02

2021-04-18

原文 読み 意味

また元はやむごとなき筋なれど 世に経るたづき少なく 時世に移ろひておぼえ衰へぬれば 心は心として こと足らず悪ろびたることども出でくるわざなめれば とりどりにことわりて中の品にぞ置くべき

02033/難易度:☆☆☆

また/もと/は/やむごとなき/すぢ/なれ/ど よ/に/ふる/たづき/すくなく ときよ/に/うつろひ/て/おぼエ/おとろへ/ぬれ/ば こころ/は/こころ/と/し/て こと/たら/ず/わろび/たる/こと-ども/いでくる/わざ/な/めれ/ば とりどり/に/ことわり/て/なかのしな/に/ぞ/おく/べき

(頭中将)またもとは最上の血筋なのに、世を渡る方途に欠け、時勢に押されて名望も衰えてしまうと、気位は以前のままでも、暮らしは事欠き意にそまぬことどもが起きるものなのでしょうから、各々判別して中の位に置くのが応分でしょう。

文構造&係り受け

主語述語と大構造

  • にことわりて…にぞ置くべき 五次元構造

〈[娘の父]〉また元はやむごとなき筋なれ 世に経る〈たづき〉少なく 時世に移ろひて〈おぼえ〉衰へぬれ 心は心として 〈こと〉足らず 悪ろびたることども出でくるわざなめれば 〈[世の人]〉とりどりにことわりて中の品にぞ置くべき

助詞と係り受け

また元はやむごとなき筋なれど 世に経るたづき少なく 時世に移ろひておぼえ衰へぬれば 心は心として こと足らず悪ろびたることども出でくるわざなめれば とりどりにことわりて中の品にぞ置くべき

光源氏の質問「元の品高く生まれながら 身は沈み位みじかくて人げなき(そのけぢめをばいかが分くべき)/02029」に対する頭中将の答え

「世に経るたづき少なく」「時世に移ろひておぼえ衰へぬれば」:対の関係


「こと足らず」「悪ろびたることども出でくるわざなめれ」:並列


「とりどりに」:「成り上がりの女性02/-032」と「元上の品の女性/02033」のそれぞれ

古語探訪

やむごとなき 02033

最上の。

たづき 02033

方策・手段。

時世に移ろひ 02033

時勢に負ける。

おぼへ 02033

世の中の評判。帝からの評判ならば「御おぼへ」となる。

心は心として 02033

当人の心持は昔と変わらぬながら。精神的文化的側面に問題がなくとも。心の面はさておくとしても。

悪ろびたること 02033

不如意なこと。

わざ 02033

そうした傾向が強いこと。運命。

めれ 02033

推量。断言を弱めている。

とりどりに 02033

成り上がり者も落ちぶれ者もそれぞれ。

ことわりて 02033

判別して。

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