片端づつ見るにかく 帚木02章06
〈テキスト〉を紡ぐ〈語り〉の技法
連用中止法 02014
「問ふなかに言ひ当つるもあり」は係る先がないので、「終止形で文が終わる」と考えるか、「連用形で文は終わるが意味的に次に続く」と考えるかの二択となる。文の終止であれば、「片端づつ見るに…言ひ当つるもあり」は文に欠落要素がないため、挿入となる。「もて離れたる」以下と位相が異なってしまう。しかし、「片端づつ見る」の結果が「もて離れたる」に影響を与えているので、意味的につながりのある連用終止と考えると自然である。なおまた、連用終止の場合、その後ろに重要表現が出てくる。この場合「言ひ当つる」ことよりも、「もて離れたる」に光源氏の関心が向いている。文のストレスからも連用中止法を支持する。
耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉
語りの対象:頭中将/物(手紙)/光源氏
分岐型・中断型・分配型:A→(B→)C→D*E→F: CはAの言い換えに近い
《片端づつ見るに・かくさまざまなる物どもこそはべりけれとて》A・B
ちらちら拾い読みしながら、よくまあいろいろな手紙があるものですねと言って、
《心あてに それかかれかなど問ふなかに》C
当て推量で、あの人の、それともあの方のなどと問ううちに、
《言ひ当つるもあり・もて離れたることをも思ひ寄せて疑ふもをかしと思せど》D・E
言い当てたのもあり、お門違いな状況までも想定して勘ぐるのも興味こそわいたが、
《言少なにてとかく紛らはしつつ とり隠したまひつ》F
言葉少なにとかくはぐらかしながらとり隠してしまわれた。
- 〈直列型〉→:修飾 #:倒置
- 〈分岐型〉( ):迂回 +:並列
- 〈中断型〉//:挿入 |:文終止・中止法
- 〈反復型〉~AX:Aの言換えX ,AB:Aの同格B
- 〈分配型〉A→B*A→C
A→B:AはBに係る
Bの情報量はAとBの合算〈情報伝達の不可逆性〉
※係り受けは主述関係を含む
※直列型は、全型共通のため単独使用に限った