御局は桐壺なり 015

お部屋は桐壺です。
あまたの御方がたを 016★★★

あまたのご夫人方の局を通り過ぎて間断がない、そうした帝の使者のお通いに、女性達が心をすり減らしになるのも、まことにもっともだと思えました。
参う上りたまふにも 017 ★☆☆

更衣から帝のもとへ参上なさる場合にも、あまりたび重なる折りには、廊下の掛け橋や渡り廊下のそこここに、汚らわしい仕掛けをしては、送り迎えに立つ女官の裾は、耐えがたく今宵の段取りが台無しになることもしばしばで、
またある時には え 018 ★☆☆

またある時には、御前へ上がる際避けては通れない馬道の戸を、両側から締め立て、あちらとこちらで示し合せて立ち往生させることも度々でした。
事にふれて数知らず 019

ことに触れ数しらず苦しいことばかりがいや増すので、それはもうひどく思い悩んでいらっしゃるのを、帝はますます愛情深くお思いになって、後涼殿に元からお仕えである更衣を、よそにお移しになり、空いた部屋を桐壺の上局として下賜なさいました。