おぼえいとやむごと 011 ★★☆

帝からの引きはこれ以上にないほどで女御の風格をお備えでしたのに、帝がむやみと側にお留になるばかりに、立派な管絃の会の折りや格式あるどんな行事にも真っ先にこの方をお召し上げになる、時には共寝したまま起きそびれそのまま側仕えをおさせになる ...
このごろ明け暮れ御 083 ★★★

このごろ明け暮れにご覧になるのは長恨歌の絵屏風で、それは亭子院(宇多法王)が絵師に描かせ、伊勢や貫之に歌を詠ませになったもので、和歌でも漢詩でも決まってあの方の思い出話に合致する筋を取り上げそれを枕に帝は昔語りをお始めになるのです。
絵に描ける楊貴妃の 092

絵に描かれた楊貴妃の容姿は、すぐれた絵師であっても筆力には限界があるのでまことに生気に乏しく、
朝に起きさせたまふ 102

翌朝せっかくお起きになっても、夜の明けるのも知らず寝過ごしたものだと往事を回想なされ、それにつけても、政務はやはり怠っておしまいのご様子。
ものなども聞こし召 103

食事などもお召し上がりにならず、朝粥は形ばかり箸をおつけになって、昼のお膳などとうてい手が出ないとお思いなので、給仕の者はお仕えしている間はつらそうなご様子をお見受けして嘆く。