限りあれば 例の作 038 ★★☆

規則のあることだから作法どおりに葬って差し上げるが、母君は同じ煙に乗ってあの世へ行ってしまいたいと泣きこがれになり、葬送の女房の車に無体にお乗りになって、愛宕というおごそかに葬儀が執り行われている土地へお着きになったお心持ちは、どのよ ...
野分立ちてにはかに 050 ★☆☆

野分が吹きにわかに肌寒さを感じる夕暮れ時、いつにもましてあのお方のことを思い出されることが多くて、帝は靫負命婦という女房をお遣わしになる。
夕月夜のをかしきほ 051

夕月が夜空に美しく昇った頃に使者をお立てになり、そのまま月をぼんやりと眺めておいでで。
かうやうの折は 御 052 ★★☆

このような折には管弦の遊びなどをお勧めになったもので、あの方は人より豊かな感情を込めて琴を爪弾し、はかなく消えてしまったその時歌った愛の言葉にしても、人とは異なる色香漂うお顔立ちが幻のように月の面と重なるのを御覧になるにつけても、歌に ...
やもめ住みなれど 054 ★★☆

母君は夫を亡くしたやもめの身ながら、娘一人の養育のためにとかく邸内は数寄を凝らし、世間に恥ずかしくない暮らしぶりをして来られたましたが、娘を失ってからは悲嘆のあまり床に臥せ塞ぎ込んでしまわれたため、草も伸びほうだいでその上今日の野分で ...