上達部上人などもあ 005

上達部や殿上人なども対処に困り目をそむける一方で、まったく見も当てられないご寵愛ぶりですな。唐土でもこうしたことが原因となって、世も乱れ災厄を招くものですと、ようやく広く世間でも、道を外れた扱いに窮する悩みの種となり、果ては楊貴妃の名 ...
御使の行き交ふほど 034 ★☆☆

付き添った使者が戻る時間でもないのに気詰まりをとめどなく口になさっておられたところ、夜中少しまわった頃、命が絶えてしまわれたと女房たちが泣き騒ぐので、使者もどうにもならず宮中に戻って来た。
むなしき御骸を見る 039 ★☆☆

虚しくなった亡骸(なきがら)をこの目にしながらも、なおも生きていらっしゃるものと思うのは甲斐がないので、灰におなりになるのを見申し上げて、今は帰らぬ人ときっぱり思い切ろうと、心とは裏腹に気丈に挨拶なされたが、牛車より降りる際に転げ落ち ...
やもめ住みなれど 054 ★★☆

母君は夫を亡くしたやもめの身ながら、娘一人の養育のためにとかく邸内は数寄を凝らし、世間に恥ずかしくない暮らしぶりをして来られたましたが、娘を失ってからは悲嘆のあまり床に臥せ塞ぎ込んでしまわれたため、草も伸びほうだいでその上今日の野分で ...
はかばかしう後見思 070

しっかりと後ろ盾する人もない宮中の人まじらいは、かえってあだにもなろうとは存じながら、ただかの遺言に違うまいその一心で、宮中へ出立させましたところ、身に余るまでのご寵愛が万時にもったいなくて、それがために人並にも扱われぬ恥を忍んで宮仕 ...