かごともきこえつべくなむ かごとも聞こえつべくなむ 01-077

2021-04-13

先ほど来、心の闇と称して、つい心中をさらけ出し、帝を非難するような言葉になってしまったが、「主上のしかなむ」以下において、帝の使者である命婦には命婦の立場があることを認識させられ、先の訴えはついかごとが口をついたのだと、言葉の調子をトーンダウンさせたい母君の心情が伝わる表現。


 いとどしく虫の音しげき浅茅生に 露置き添ふる 雲の上人 かごとも聞こえつべくなむ と言はせたまふ

そうでなくても虫が鳴きしきる草深いこの侘しい鄙の宿に ますますもって涙の露を置いてゆく雲の上からの使者よ 愚痴もつい申したくなり、と侍女に返歌を読み上げさせる。

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