ところ 所 02-103
女の意味。貴人の人数を数える数詞に用いるので、この表現からも、このエピソードの主人公である木枯の女の出自の良さがうかがわれる。
さて また同じころ まかり通ひし所は 人も立ちまさり 心ばせまことにゆゑありと見えぬべく うち詠み 走り書き 掻い弾く爪音 手つき口つき みなたどたどしからず見聞きわたりはべりき
「さてまた、同じ頃わたくしめの通っておりましたところは人品も格段にまさり、趣味の面でもまことに教養深いと誰もが思うように、歌もやすやすと詠み、字もさらさらと書き、ちょっと鳴らしてみる琴の爪音演奏の手ぶり歌いぶり、みなこともなくこなして見せるのを幾度となく目にも耳にもして来たものです。