うちとけたるうしろみ 02-058

2021-01-13

日常の世話。男女の仲には遠慮が大事なのだろう。


また まめまめしき筋を立てて 耳はさみがちに 美さうなき家刀自の ひとへにうちとけたる後見ばかりをして 朝夕の出で入りにつけても 公私の人のたたずまひ 善き悪しきことの目にも耳にもとまるありさまを 疎き人にわざとうちまねばむやは 近くて見む人の聞きわき思ひ知るべからむに語りも合はせばやと うちも笑まれ涙もさしぐみ もしはあやなきおほやけ腹立たしく心ひとつに思ひあまることなど多かるを 何にかは聞かせむと思へば うちそむかれて人知れぬ思ひ出で笑ひもせられ あはれともうち独りごたるるに 何ごとぞなどあはつかにさし仰ぎゐたらむは いかがは口惜しからぬ

(左馬頭)また一方で、実直一点張りに髪を耳に挟みがちにして美しく顔づくることもない主婦が、ひたすら無遠慮な世話焼きばかりをして、朝な夕な出仕の行き帰りにつけても、公私にわたる世人の様子よかれあしかれ耳目にとまった諸事情を、仲のよくない女にわざわざ打ち明けたりするでしょうか、身近に暮らし聞き分け思いやりのある妻にこそ語りかけたいものなのに、つい笑えることでも泣かれることでも、あるいは非道のあまり公憤を覚え胸先ひとつにおさめておけないことなど多々あるものを、どうかして語り聞かせようと思えば、決まってそっぱを向かれ、こちらの知り得ない思い出し笑いを浮かべられては、ああとため息も出ようものなのに、なんですのなどと間抜けた顔でこっちをふり仰ぎでもしようものなら、何とまあ情けないことでしょう。

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