ただうはべばかりのなさけ ただうはべばかりの情け ただうわべばかりのなさけ ただうわべばかりの情け 02-018
うわべの愛情の意味。風流気取りの意味ではない。「はかなきついでの情け/02-057」(左馬頭)、「うはべの情け/02-064」(頭中将)、「見る目の情け/02-090」(左馬頭)いずれも、傍目からは情け深く見えるものの、内実はそうではないので、真に頼りとはできないことをいう。特に混乱が起きているのは、指を喰う女は嫉妬心は強いものの、男のためになんでもする情愛深い女であるため、このカテゴリーから外して解釈されているが、間違いである。この女は恨みが本心で、深い愛情はその上につけたものである。だから、愛情が深くとも本心である恨みを消すことはできなかったのだ。この点を逃すと、左馬頭の発言の多くを曲解してしまう。/02-090でまた触れたい。
ただうはべばかりの情けに手走り書き をりふしの答へ心得てうちしなどばかりは 随分によろしきも多かりと見たまふれど そもまことにその方を取り出でむ選びに かならず漏るまじきは いと難しや
(頭中将)ただうわべばかりの愛情からさらさらと文字を書きちらし、時節に応じた応答のこつを心得てさっと返書をしたためるぐらいのことは、そこそこできる女も多いように見えますが、そもまことに妻選びの候補として決して漏れるおそれのない女性は先ずもっていないものですよ。