わりなき わりなし 01-061

2021-04-13

道理に合わない、理屈にあわない。時間の経過とともに、更衣を失った悲しみは紛れてゆくだろうと思われるのに、逆に耐えがたいことに対して。


ほど経ばすこしうち紛るることもやと 待ち過ぐす月日に添へていと忍びがたきは わりなきわざになむ いはけなき人をいかにと思ひやりつつ もろともに育まぬおぼつかなさを 今はなほ昔のかたみになずらへてものしたまへなど こまやかに書かせたまへり

時が経てば少しは心の紛れることもあろうかと、待ち過ごす月日と共に忍び難たさが増すのは、割り切れぬ道理であるよ。年端のゆかぬお方はいかがかと思いをかけながら、ご一緒にお育てできない心もとなさといっては。今はこのわたくしを亡き人を思い出すよすがと見なしてお出でなさいなどと、細やかな心遣いでしたためていらっしゃる。

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