いとさばかりならむあたりにはたれかすかされよりはべらむ いとさばかりならむあたりには誰れかすかされ寄りはべらむ さばかりなり さばかり すかされよる すかされ寄る 02-024
先の頭中将の論は、仲人に言いくるめられるので、実際に女と接しないと欠点は見えてこないというものであった。この論からすれば、取り柄がない女に誰も言い寄らないというのはおかしい。取り柄がなくても仲人に騙されるのだから。ただ、頭中将の頭の中では、全く取り柄のない女など下賎な身以外に考えられず、下賎な女には、仲人がどうごまかそうが、はなから相手にしないとの結論があり、この発言になったのだろう。頭中将は恋の道では先輩風を吹かせたいがために、光源氏の前では恰好をつけていたい。しかし、光源氏の質問は議論の出発点を混ぜ返すものであり、これにまじめに答えようとして、あたふたしている姿が浮かぶ。
いとさばかりならむあたりには 誰れかはすかされ寄りはべらむ
(頭中将)まったくそんなつまらないところへは、誰がだまされて言い寄りましょう。