ごらんじはじめし 御覧じ初めし ご覧じ初めし 01-087
「ご覧ず」は「見る」の尊敬語。「見る」は、一般に女性と交わることをいう。普段見ることが許されない女性を見る機会は、直接的に性行為と結びつく。当時の「(顔を)見る」は、今ならさしずめ、「下着姿か丸裸を見る」に等しい。女性にしても、顔を見られることは、恐怖と性的興奮を覚えたことだろう。
いとかうしも見えじと思し静むれど さらにえ忍びあへさせたまはず 御覧じ初めし年月のことさへかき集め よろづに思し続けられて 時の間もおぼつかなかりしを かくても月日は経にけり とあさましう思し召さる
帝は人からそんな風には見られまいと気持ちを静めようとなさるが、少しも我慢おできにならず、あの方と初めて契りを交わした日まで遡り、ありとあらゆる追想に耽られて、往事は束の間もいたたまれなかったが、それでも月日は過ぎ行くものかと、我が身ながらあきれてしまわれるのでした。