いかさまに 如何様に いかさまなり 如何様なり 01-028
「いかさまにせん」の略で「どうしたらよいか」と解釈されるが、「いかにせん」ならその意味になる。そもそも「いかさまにせん」は表現として自然さを欠く。ここは「いかさまにならむ」の中略、「どうなってしまうのか」の意味。帝はもちろん回復を願っている。あるいは信じている。最悪のことを考えてことを処理しようという冷静さはない。ここで初めて更衣の死が意識にのぼる。ひょっとして……、そう思った瞬間の電撃が走るような帝の動揺ぶりを感じ取りたい。
いとにほひやかにうつくしげなる人の いたう面痩せて いとあはれとものを思ひしみながら 言に出でても聞こえやらず あるかなきかに消え入りつつものしたまふを 御覧ずるに 来し方行く末思し召されず よろづのことを泣く泣く契りのたまはすれど 御いらへもえ聞こえたまはず まみなどもいとたゆげにて いとどなよなよと我かの気色にて臥したれば いかさまにと思し召しまどはる
とても艶やかでかわいらしいお方が、ひどく面やせて、ああつらいと運命をしみじみ感じながらも、言葉に出して申し上げることもできず、生死もつかず消え入りそうにしていらっしゃるご様子をご覧になるにつけ、後先のわきまえもなく、どんな誓いをも涙ながらにお立てになるのでしたが、更衣はお返事を申し上げることもできず、目もとなども大層だるそうで、益々なよなよとして気を失いその場に崩れてしまわれたので、帝はどうなってしまわれるのだろうと御心を取り乱しておしまいでした。