やまとさうをおほせて 倭相を仰せて やまとそうをおおせて やまとさうをおほす 倭相を仰す やまとそうをおおす 01-125

2021-05-15

「仰す」は命じる。「仰せらる」「仰せたまふ」は「言ふ」の尊敬語。倭相をお命じになって。倭相に関して詳細は不明であるが、東宮を選ぶ際に考慮すべき事項のひとつ、国が乱れるのかひとつにまとまるのかを、観相の立場から判断するのであろう。この語句のかかる場所は不明だが、別本系統の陽明文庫など文末「習はさせたまふ」に「に」を補っており、これを採用すると、やや構文は入り組むが「ものしたまへば」にかけることができる。


帝かしこき御心に 倭相を仰せて 思しよりにける筋なれば 今までこの君を親王にもなさせたまはざりけるを 相人はまことにかしこかりけりと思して 無品の親王の 外戚の寄せなきにては漂はさじ わが御世もいと定めなきを ただ人にて朝廷の御後見をするなむ 行く先も頼もしげなめること と思し定めて いよいよ道々の才を習はさせたまふに

帝はかしこき深慮から、倭流の人相見にご命じになり、ご自身がつとに案じておられた事柄なので、今までこの宮を親王にもなされなかったが、相人はまっこと神意を見抜いたものよと心に落ち、無品親王に付けたところで外戚の支援がない状態にはしておけまい。わが御世もいつまで続くかはなはだ当てにならぬものを。臣下として朝廷の補佐をすることこそが先々も頼もしかろうと、思い定められて、ますます諸般の学問をお習わせになったところ、

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