おはすらむところ おはすらむ所 おわすらむところ おわすらむ所 01-109

2021-05-15

亡き更衣の魂の居場所、ここも長恨歌の影響にある道教的な考え方。当時の貴族の死後の世界観では、極楽浄土は生前積んだ功徳により、上品上生から下品下生まで九等に別れる(観無量寿経)死後の行き先が決まるので、娘のもとに行きたいと願うのは現代の感覚ならば至極自然であっても、当時の死生観からはかなり特殊である点は押さえておきたい。


かの御祖母北の方 慰む方なく思し沈みて おはすらむ所にだに尋ね行かむと願ひたまひししるしにや つひに亡せたまひぬれば またこれを悲しび思すこと 限りなし

かの宮の祖母は(東宮擁立が夢と消えた今)心の慰めようなく悲嘆にくれ、せめて娘のおられるところに行きたいものとお念じになったご利益からか、ついに身罷ってしまわれたので、今またあの方の縁者を失った帝の悲しみは限りがなかった。

Posted by 管理者