あはれなるもの あわれなるもの あはれなる物 あわれなる物 01-004
愛玩物であると注されることが一般的だが、「あはれ」という言葉が物化してそこにあるというニュアンス、「あはれそのもの」。やはり意思疎通ができないという「もの」がもつ特性を有し、それゆえ「あかず」愛しさがつのる。
朝夕の宮仕へにつけても 人の心をのみ動かし 恨みを負ふ積もりにやありけむ いと篤しくなりゆき もの心細げに里がちなるを いよいよあかずあはれなるものに思ほして 人のそしりをもえ憚らせたまはず 世のためしにもなりぬべき御もてなしなり
朝夕の宮仕えにつけても、女房たちの心を掻き乱し、恨みをこうむることが度重なったせいだろうか、具合はひどくなるばかりで、後見のない心細さに打ちひしがれながら里へ帰りがちになる姿に、帝はますます癒しようもなく愛しさをつのらせ、周囲がもらす陰口も気にとめるご様子なく、後の世までの語り種ともなりかねないご寵愛でした。