かかるこころだにうせなばいとあはれとなむおもふべき かかる心だに失せなばいとあはれとなむ思ふべき かかるこころだにうせなばいとあわれとなむおもうべき かかる心だに失せなばいとあわれとなむ思うべき 02-096

2021-05-31

左馬頭はこの段階でも「いとあはれ」とは思っていない。女に対する愛情表現を拾うと「心づきなく(愛情がわかず)/02-096」「心もけしうはあらずはべりしかど(愛情もかなり沸いてきましたが)/02-097」となる。女を失ったあとに「(いと)あはれ」に変わるのである。


かくおぞましくは いみじき契り深くとも 絶えてまた見じ 限りと思はば かくわりなきもの疑ひはせよ 行く先長く見えむと思はば つらきことありとも 念じてなのめに思ひなりて かかる心だに失せなば いとあはれとなむ思ふべき 人並々にもなり すこしおとなびむに添へて また並ぶ人なくあるべきやうなど かしこく教へたつるかなと思ひたまへて われたけく言ひそしはべるに

「こうも感情を露わにするのでは、たとえ夫婦の宿縁が深くてもこれを最後にもう逢うまい。これぎりと思うならこうも理不尽な邪推をしていろ。行く先長く連れ添ってもらいたいなら、恨めしいことがあってもじっとこらえて男にはありがちなことだと自制して、こんなひがみさえなくなればどんなにいとしく思えることか。私が人並みにも出世し、すこし貫禄でも出ようなら、正妻たるそなたに並ぶ女などいはしないのだから」などと、みごと諭しおおせたと思いながらいい気になってまくし立てておりますと、

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