世語りに人や伝へ 若紫09章07

2021-05-14

原文 読み 意味

 世語りに人や伝へむたぐひなく憂き身を覚めぬ夢になしても
思し乱れたるさまも いと道理にかたじけなし

05142/難易度:☆☆☆

 よがたり/に/ひと/や/つたへ/む/たぐひ/なく/うき/み/を/さめ/ぬ/ゆめ/に/なし/て/も
おぼし-みだれ/たる/さま/も いと/ことわり/に/かたじけなし

《後々までの語り草に人々も伝えましょうか たぐいなくつらい身を 覚めることのない夢の中のできごとと致しましても》
お苦しみになるご様子も、至極当然でかたじけないものである。

 世語りに人や伝へむたぐひなく憂き身を覚めぬ夢になしても
思し乱れたるさまも いと道理にかたじけなし

大構造と係り受け

古語探訪

人や伝へむ 05142

きっと人が伝えますでしょうという疑問をつかった肯定文。

夢になしても 05142

この逢瀬を夢のできごとであると考えるにしてもの意味。先に注意したように、光はこの逢瀬を夢(願望充足)として捉え、またいつまでも続く夢(現実から遮断された世界)として捉えているのに対して、藤壺は現実と無縁な夢のできごとであって人の非難はまのがれないと「夢」の意味を読み替えるているのである。

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