この夕つ方内裏より 末摘花02章19

2021-05-11

原文 読み 意味

この夕つ方 内裏よりもろともにまかでたまひける やがて大殿にも寄らず 二条院にもあらで 引き別れたまひけるを いづちならむと ただならで 我も行く方あれど 後につきてうかがひけり

06023/難易度:☆☆☆

この/ゆふつかた うち/より/もろともに/まかで/たまひ/ける やがて/おほいどの/に/も/よら/ず にでうのゐん/に/も/あら/で ひき-わかれ/たまひ/ける/を いづち/なら/む/と ただ/なら/で われ/も/ゆくかた/あれ/ど あと/に/つき/て/うかがひ/けり

この夕方、お二人は内裏から一緒に退出なさったが、君はそのまま左大臣邸にも寄らず、二条院にも行かないで、別れてしまわれたのが、どこへお行きかとどうにも気になり、自分も寄って行く女があるけれど、あとについてここで様子をうかがっていたのである。

この夕つ方 内裏よりもろともにまかでたまひける やがて大殿にも寄らず 二条院にもあらで 引き別れたまひけるを いづちならむと ただならで 我も行く方あれど 後につきてうかがひけり

大構造と係り受け

古語探訪

この夕つ方……後につきてうかがひけり 06023

光から頭中将へ主体が途中で変化して見え、読みづらく感じられるが、話者はここで、頭中将の立場に立って論じているのである。話者が登場人物になるのは、登場人物の心内語を語る時、およびその前後である。ここでは「いづちならむとただならで我も行く方あれど」の部分がそれにあたり、心内語をはく主体と話者が一体化するのである。登場人物と話者が一体化するとは、話者にとって頭中将はもはやheの立場になく、Iになってしまうのだ。そこで、主語として頭中将は現れなくなるのだ。次に光の立場だが、頭中将から見て、光はただ一人の相手であるyouである。その動作には主体敬語である尊敬語がつく(「もろともにまかでたまひ」も中心主体が光である)から、これにより自分の動作と見分けつけうるのである。

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