近う呼び寄せたてま 若紫13章03

2021-05-10

原文 読み 意味

近う呼び寄せたてまつりたまへるに かの御移り香の いみじう艶に染みかへらせたまへれば をかしの御匂ひや 御衣はいと萎えて と 心苦しげに思いたり

05210/難易度:☆☆☆

ちかう/よび/よせ/たてまつり/たまへ/る/に かの/おほむ-うつりが/の いみじう/えん/に/しみ/かへら/せ/たまへ/れ/ば をかし/の/おほむ-にほひ/や おほむ-ぞ/は/いと/なエ/て/と こころぐるしげ/に/おぼい/たり

父宮が近くに呼び寄せ申し上げになると、あの光の君の移り香が、たいそう芳しく染みつき匂い立っていらっしゃるので、がぐわしい匂いだな、お召し物はひどく疲れているのにと、いたわしく思いになる。

近う呼び寄せたてまつりたまへるに かの御移り香の いみじう艶に染みかへらせたまへれば をかしの御匂ひや 御衣はいと萎えて と 心苦しげに思いたり

大構造と係り受け

古語探訪

かの御移り香 05210

光の匂いが紫の服に移ったこと。光の服の匂いと諸注は考えるが、光自身の生得的な匂いではないかと思う。光の後の世代である薫や匂宮が、生まれつきかぐわしい匂いを放ったように、光自身そうした特質を有していたのではないかと思う。以前にも述べたことがあるが、さらに光は匂いだけでなく光輝いていたとわたしは読むが、まあ、注釈を越えた部分なので深入りしない。

染みかへらせ 05210

「かへり」はむせ返るなどと同じ用法。いったん染みこんだ匂いが逆に周囲に発散しているのである。

心苦しげに 05210

心配の意味。後にも出てくる。

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