君は男君のおはせず 若紫16章13
原文 読み 意味
君は 男君のおはせずなどして さうざうしき夕暮などばかりぞ 尼君を恋ひきこえたまひて うち泣きなどしたまへど 宮をばことに思ひ出できこえたまはず もとより見ならひきこえたまはでならひたまへれば 今はただこの後の親を いみじう睦びまつはしきこえたまふ
05269/難易度:☆☆☆
きみ/は をとこぎみ/の/おはせ/ず/など/し/て さうざうしき/ゆふぐれ/など/ばかり/ぞ あまぎみ/を/こひ/きこエ/たまひ/て うち-なき/など/し/たまへ/ど みや/を/ば/こと/に/おもひ/いで/きこエ/たまは/ず もとより/みならひ/きこエ/たまは/で/ならひ/たまへ/れ/ば いま/は/ただ/この/のち/の/おや/を いみじう/むつび/まつはし/きこエ/たまふ
女君は、君がいらっしゃらないなどで、さみしい夕暮れ時などだけは、尼君を恋い慕い申し上げになさって、つい泣いたりなさるが、父宮のことは特に思い出し申し上げにならない。もとよりにめったにお顔を拝見いたされることもなくお育ちになったので、今ではただこの第二の親をひどく親しみお離し申し上げずにいらっしゃる。
君は 男君のおはせずなどして さうざうしき夕暮などばかりぞ 尼君を恋ひきこえたまひて うち泣きなどしたまへど 宮をばことに思ひ出できこえたまはず もとより見ならひきこえたまはでならひたまへれば 今はただこの後の親を いみじう睦びまつはしきこえたまふ
大構造と係り受け
古語探訪
宮 05269
父宮。
見ならひきこえたまはで 05269
文字通り、親の顔を見慣れることがなかったこと。一緒に住んでいなかったからである。
後の親 05269
光。