いで君も書いたまへ 若紫16章04

2021-05-10

原文 読み 意味

いで 君も書いたまへ とあれば まだ ようは書かず とて 見上げたまへるが 何心なくうつくしげなれば うちほほ笑みて よからねど むげに書かぬこそ悪ろけれ 教へきこえむかし とのたまへば うちそばみて書いたまふ手つき 筆とりたまへるさまの幼げなるも らうたうのみおぼゆれば 心ながらあやしと思す

05260/難易度:☆☆☆

いで きみ/も/かい/たまへ と/あれ/ば まだ よう/は/かか/ず とて みあげ/たまへ/る/が なにごころなく/うつくしげ/なれ/ば うち-ほほゑみ/て よから/ね/ど むげに/かか/ぬ/こそ/わろけれ をしへ/きこエ/む/かし と/のたまへ/ば うち-そばみ/て/かい/たまふ/てつき ふで/とり/たまへ/る/さま/の/をさなげ/なる/も らうたう/のみ/おぼゆれ/ば こころ-ながら/あやし/と/おぼす

「さあ、あなたもお書きなさい」と仰せがあると、「まだうまく書けない」と見上げておられるお顔が、何ともかわいらしいので、つい微笑んで、「うまくなくても、むげに書かないのはよくない。教え申し上げよう」とおっしゃるので、横目で手本を見ながらお書きになる墨の跡や筆を運ばれる様子の拙い感じも、愛しくばかり思われるので、自分の気持ちながら不思議だとお思いになる。

いで 君も書いたまへ とあれば まだ ようは書かず とて 見上げたまへるが 何心なくうつくしげなれば うちほほ笑みて よからねど むげに書かぬこそ悪ろけれ 教へきこえむかし とのたまへば うちそばみて書いたまふ手つき 筆とりたまへるさまの幼げなるも らうたうのみおぼゆれば 心ながらあやしと思す

大構造と係り受け

古語探訪

うちそばみて 05260

単に横をちらっと見たのではない。だいたい、そういう訳を与えた段階で、物語においてその動作が何の意味があるのか、注釈者は考えないのだろうか。すべてのテキストには意味(テキストの他の部分との関連)があるのである。これは「やがて本にと思すにや」の具体的場面で、紫が光の書を見て、なるべく似させようとして書いたのである。

心ながら 05260

自分の心でありながら。

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