いとをかしと聞いた 若紫10章15

2021-05-08

原文 読み 意味

いとをかしと聞いたまへど 人びとの苦しと思ひたれば 聞かぬやうにて まめやかなる御とぶらひを聞こえ置きたまひて 帰りたまひぬ げに 言ふかひなのけはひや さりとも いとよう教へてむ と思す

05171/難易度:☆☆☆

いと/をかし/と/きい/たまへ/ど ひとびと/の/くるし/と/おもひ/たれ/ば きか/ぬ/やう/にて まめやか/なる/おほむ-とぶらひ/を/きこエ/おき/たまひ/て かへり/たまひ/ぬ げに いふかひな/の/けはひ/や さりとも いと/よう/をしへ/て/む と/おぼす

とても興味をもってお聞きになるが、女房たちが苦しそうに思っているので、何も聞かぬふうにして、誠実な見舞いの言葉をお残しになってお帰えりになった。まったく尼君の言われる通り、どうにもしようのない感じだな、そうではあるが、ちゃんとしっかり教えることにしようとお思いになる。

いとをかしと聞いたまへど 人びとの苦しと思ひたれば 聞かぬやうにて まめやかなる御とぶらひを聞こえ置きたまひて 帰りたまひぬ げに 言ふかひなのけはひや さりとも いとよう教へてむ と思す

大構造と係り受け

古語探訪

げに 05171

前に尼君が言った言葉「いたまだ言ふかひなき程にて」を指し、なるほどその通りだという意識。光は、紫の行動をかわいいと判断したのではなく、幼稚でしようがないと判断したことに注意したい。「いとをかし」という興味は持ちながらも、まわりをいたたまれなくさせている紫の行動を分別のないものと見ているのである。ここには光の行動学が見て取れると思う。まわりの者に対する気配りである。しかし、そうした幼稚な行動から熱がさめたわけではなく、それはそれとしてよく教えようと決心したのである。注意を向けたかったのは、紫を夢中で愛しているのではなく、批判する目は持っていることである。

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