例の所に入れたてま 若紫11章08

2021-05-09

原文 読み 意味

例の所に入れたてまつりて 少納言 御ありさまなど うち泣きつつ聞こえ続くるに あいなう 御袖もただならず

05183/難易度:☆☆☆

れい/の/ところ/に/いれ/たてまつり/て せうなごん おほむ-ありさま/など うち-なき/つつ/きこエ/つづくる/に あいなう おほむ-そで/も/ただ/なら/ず

君をいつもの部屋にお通し申して、少納言は、姫君のご様子などを思わず泣きながら長々と申し上げるので、君もたまらずお袖までいつにないほどお濡らしになる。

例の所に入れたてまつりて 少納言 御ありさまなど うち泣きつつ聞こえ続くるに あいなう 御袖もただならず

大構造と係り受け

古語探訪

例のところ 05183

以前光が訪ねた時に通された「南の廂」である。

あいなう 05183

無益にという語り手の判断(いわゆる草紙地)こと。「あいなし」を解釈するときには、この語がどこにかかるかを押さえ、それがなぜ無益なのかを考えるという段取りになる。先ずかかる先は「御袖もただならず」である。お顔のみかそのお袖までもただならずお濡らしになるということ。それがなぜ無益かというと、涙を流す自体は、紫の立場を好転させるために役立たないからである。従って、言葉を補って訳せば、紫を救うことにはならないが、どうしようもなくお袖までも尋常ならずお濡らしになったとなる。
少納言の会話は非常に込み入っているので、単に現代語にかえるだけでなく、それを解きほぐすことが大事である。

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