もし聞き出でたてま 若紫16章10
目次
原文 読み 意味
もし 聞き出でたてまつらば 告げよ とのたまふも わづらはしく 僧都の御もとにも 尋ねきこえたまへど あとはかなくて あたらしかりし御容貌など 恋しく悲しと思す
05266/難易度:☆☆☆
もし きき/いで/たてまつら/ば つげ/よ と/のたまふ/も わづらはしく そうづ/の/おほむ-もと/に/も たづね/きこエ/たまへ/ど あとはかなく/て あたらしかり/し/おほむ-かたち/など こひしく/かなし/と/おぼす
「もし聞き出し申し上げることがあれば知らせよ」とご命じになるのも厄介なことであり、尼君の兄にあたる北山の僧都の御もとにもお尋ね申されるが手がかりはつかめず、残念なことになったお顔立ちなど、恋しく悲しいとお感じになる。
もし 聞き出でたてまつらば 告げよ とのたまふも わづらはしく 僧都の御もとにも 尋ねきこえたまへど あとはかなくて あたらしかりし御容貌など 恋しく悲しと思す
大構造と係り受け
古語探訪
わづらはしく 05266
言われる女房たちが。
僧都 05266
尼君の兄である北山の僧都。
あとはかなく 05266
跡形なく。
あたらしかりし 05266
失ってもったいない。容貌がきれいだということは、縁組みとして好条件である。つまり、権力のある家柄の男性と縁組みできる可能性がある。父親として子を失った残念さとともに、それが美貌の娘であったことがさらに残念さをふかめる。それを失ったから「あたらし」(もったいない)なのである。