まだおどろいたまは 若紫14章11
原文 読み 意味
まだ おどろいたまはじな いで 御目覚ましきこえむ かかる朝霧を知らでは 寝るものか とて 入りたまへば や とも え聞こえず
05232/難易度:☆☆☆
まだ おどろい/たまは/じ/な いで おほむ-め/さまし/きこエ/む かかる/あさぎり/を/しら/で/は ぬる/ものか とて いり/たまへ/ば や と/も え/きこエ/ず
「まだお起きでないようですね。さあ、お目をさまさせてあげましょう。こんな朝霧を知らずに寝るものでしょうか」と、御座所にお入りになると、誰もあれともお止め申し上げられない。
まだ おどろいたまはじな いで 御目覚ましきこえむ かかる朝霧を知らでは 寝るものか とて 入りたまへば や とも え聞こえず
大構造と係り受け
古語探訪
かかる朝霧を知らで 05232
後朝の別れにふさわしい表現。光は恋の場面を仮想して愉しんでいるのだろう。「入りたまへば」は、廂の間からさらに奥の間である紫の寝所に入って行った。「や」は人を制止するためのかけ声。
え聞こえず 05232
寝所の中で仕えている女房が声をかけられなかったのであって、廂の間の女房ではない。なぜなら「入りたまへば」とある。「已然形+ば」の形は、すでに入りおわった時のことであるから、寝所にいる女房がびっくりして、まあとか声をかけそうなものだが、そうできなかったのである。廂の間の女房が声をかけるとすれば、入ろうとしている段階であろう。「入らむとすれども」とかになる。