いと忍びて通ひたま 若紫12章11
目次
原文 読み 意味
いと忍びて通ひたまふ所の道なりけるを思し出でて 門うちたたかせたまへど 聞きつくる人なし
05202/難易度:☆☆☆
いと/しのび/て/かよひ/たまふ/ところ/の/みち/なり/ける/を/おぼし/いで/て かど/うち-たたか/せ/たまへ/ど きき/つくる/ひと/なし
ごく内密にお通いになる場所の通り道であったなと思い出しになって、従者に門を軽く叩かせになるが、聞きつけ取り合う者もいない。
いと忍びて通ひたまふ所の道なりけるを思し出でて 門うちたたかせたまへど 聞きつくる人なし
大構造と係り受け
古語探訪
いと忍びて通ひたまふ所の道なりける 05202
誰のことか不明と注釈は言う。もともと紫がいる場所を知ったのは、六条京極わたり(六条御息所を想起させる)の忍びたる所に通う途中であった。テキストのからまり具合からは、そうとるのが自然だが、そうすると二条院とは逆向きに光は歩き出したことになる。あるいは、目と鼻の先であったのかもしれない。
門うちたたかせたまへど聞きつくる人なし 05202
嫉妬から来ているのであり、聞こえていたが答えなかったのである。以上より、この歌は嫉妬の歌であり、またなかなか高飛車な高圧的な歌である。これらすべて総合すると、相手は六条御息所しかないと考えるのが自然である。こういうあたりで光は御息所に嫉妬心をかき立ててきているのである。夕顔の時もそうであったし、今回も御息所のもとへ通う途中で紫の家を惟光から知らされ、急遽場所を変更したことに始まる。そのあたりの事情を詳細は別にして御息所は知っていると読むべきであろう。