あはれに聞きたまひ 若紫10章12
原文 読み 意味
あはれに聞きたまひて 何か 浅う思ひたまへむことゆゑ かう好き好きしきさまを見えたてまつらむ いかなる契りにか 見たてまつりそめしより あはれに思ひきこゆるも あやしきまで この世のことにはおぼえはべらぬ などのたまひて かひなき心地のみしはべるを かのいはけなうものしたまふ御一声 いかで とのたまへば
05168/難易度:☆☆☆
あはれ/に/きき/たまひ/て なにか あさう/おもひ/たまへ/む/こと/ゆゑ かう/すきずきしき/さま/を/みエ/たてまつら/む いかなる/ちぎり/に/か み/たてまつり/そめ/し/より あはれ/に/おもひ/きこゆる/も あやしき/まで このよ/の/こと/に/は/おぼエ/はべら/ぬ など/のたまひ/て かひなき/ここち/のみ/し/はべる/を かの/いはけなう/ものし/たまふ/おほむ-ひとこゑ いかで と/のたまへ/ば
君は愛情あらたにお聞きになって、「どうして、浅い思いゆえに、こうして、好き者みたいな様子をお見せいたしましょうか。いかなる宿縁なのか、お見初め申してから愛しく思い申し上げるのも、自分でもわからないほどで、この世にあることとは思えないのです」などとおっしゃって、「甲斐ない気持ちばかりしておりますので、あの幼くいらっしゃるお声を一声、何とぞ」とおっしゃったところ、
あはれに聞きたまひて 何か 浅う思ひたまへむことゆゑ かう好き好きしきさまを見えたてまつらむ いかなる契りにか 見たてまつりそめしより あはれに思ひきこゆるも あやしきまで この世のことにはおぼえはべらぬ などのたまひて かひなき心地のみしはべるを かのいはけなうものしたまふ御一声 いかで とのたまへば
大構造と係り受け
古語探訪
あはれに聞きたまふ 05168
紫への愛情を再び呼び起こしてということ。
何か 05168
反語で、「見えたてまつらむ」にかかる。どうして見せましょうか。
浅う思ひたまへむことゆゑ 05168
軽い気持ちから。こんな好き者みたいな真似は、浮気な気持ちからではなく、前世からの宿縁だから、あえて好き者みたいな真似までするのだということ。反語の焦点は理由にあるのであり、「すきずきしきさま」を見せていないと考えると前後がわからなくなる。真剣だからこそすきずきしく見られたってかまわないという開き直りである。
いかで 05189
なんとかして。