例の御供に離れぬ惟 若紫10章05
原文 読み 意味
例の御供に離れぬ惟光なむ 故按察使大納言の家にはべりて もののたよりにとぶらひてはべりしかば かの尼上 いたう弱りたまひにたれば 何ごともおぼえず となむ申してはべりし と聞こゆれば
05161/難易度:☆☆☆
れい/の/おほむ-とも/に/はなれ/ぬ/これみつ/なむ こ-あぜちのだいなごん/の/いへ/に/はべり/て もの/の/たより/に/とぶらひ/て/はべり/しか/ば かの/あまうへ いたう/よわり/たまひ/に/たれ/ば なにごと/も/おぼエ/ず と/なむ/まうし/て/はべり/し と/きこゆれ/ば
いつものお供として側を離れない惟光が、「亡き按察使大納言(アゼチノダイナゴン)の家です。ある日所用のついでにお見舞いしたことがございましたが、あの尼君は、もうたいそう弱っておしまいなので、何事もわからないと、まあそのように取次ぎの者が申しておりました」と申し上げると、
例の御供に離れぬ惟光なむ 故按察使大納言の家にはべりて もののたよりにとぶらひてはべりしかば かの尼上 いたう弱りたまひにたれば 何ごともおぼえず となむ申してはべりし と聞こゆれば
大構造と係り受け
古語探訪
故按察使大納言 05161
紫の祖父、尼君の夫。
もののたより 05161
ある確かな理由だが、口にだす必要がないので名目を濁すときに使う表現で、ある機会にの意味と、あるついでの意味が可能だ。ある機会にの意味なら、尼君を尋ねるのが目的であったことになり、あるついでにの意味なら、別の場所に所用で行くついでに立ち寄ったことになる。光の用事以外に尼君に用事があるとは考えられないので、あるついでにの意味である。
とぶらひ 05161
訪問の意味と、見舞いの意味があるが、見舞いという理由があるから、尼君を尋ねたのであり、単に訪問したのではない。
何ごともおぼえず 05161
取次ぎの者の返事で、光の従者である自分が見舞いに来たことを取り次いでもらったが、病気で苦しく何もわからないとの返答が返ってきた。