秋の末つ方いともの 若紫10章03
目次
原文 読み 意味
秋の末つ方 いともの心細くて嘆きたまふ 月のをかしき夜 忍びたる所にからうして思ひ立ちたまへるを 時雨めいてうちそそく
05159/難易度:☆☆☆
あき/の/すゑつかた いと/もの-こころぼそく/て/なげき/たまふ つき/の/をかしき/よ しのび/たる/ところ/に/からうして/おもひ/たち/たまへ/る/を しぐれめい/て うち-そそく
秋の終わり頃、君はたいそう運命が思われ心細くてお嘆きになる。月が趣き深い夜、忍んで通っているところに、やっとの思いで決意し出立なさるが、時雨らしく雨が時折りうち注ぐ。
秋の末つ方 いともの心細くて嘆きたまふ 月のをかしき夜 忍びたる所にからうして思ひ立ちたまへるを 時雨めいてうちそそく
大構造と係り受け
古語探訪
秋の末つ方 05159
晩秋九月。
もの心細く 05159
単に心細いのではない。ここは具体的な悩みで、藤壺に子を孕ませてしまった自分の運命に心を揺さぶられている状態。帝にことが発覚すれば、どういうことになるのか考えも及ばず、不安でならない毎日である。
月のをかしき夜 05159
月のあやしい力で、男も女も落ち着かず、異性を求めずにいられなくなる夜のこと。
思ひ立ち 05159
決心するの意味と、決心して出かけるの意味がある。ここはどちらかと言えば後者の意味。
時雨めいて 05159
今降っている雨が時雨であるらしいとの意味。時雨みたいな雨という意味ではない。時雨は秋にある通り雨。