何ごとをかは聞こえ 若紫09章05
目次
原文 読み 意味
何ごとをかは聞こえ尽くしたまはむ くらぶの山に宿りも取らまほしげなれど あやにくなる短夜にて あさましう なかなかなり
05140/難易度:☆☆☆
なにごと/を/かは/きこエ/つくし/たまは/む くらぶのやま/に/やどり/も/とら/まほしげ/なれ/ど あやにく/なる/みじかよ/にて あさましう なかなか/なり
後朝の歌に託そうにも、心のままに言葉を尽くすことなどおできになれない。夜明けのない暗部の山に宿りも取りたそうであるけれど、現実は憎みたいくらい短い夜だから、ただあきれるばかりで、かえって思いがつのる。
何ごとをかは聞こえ尽くしたまはむ くらぶの山に宿りも取らまほしげなれど あやにくなる短夜にて あさましう なかなかなり
大構造と係り受け
古語探訪
くらぶの山 05140
鞍馬山ともそうでないとも諸説あり不明である。その名に示される暗がりのイメージから夜明けのない場所として想起されているようである。それが光の歌を呼び起こす。
あやにくなる 05140
程度のはなはだしさに憎みたくなる気持ち。この場合、夜明けなどない場所に行きたいくらいなのに、実際は四月(初夏)のはなはだ短い夜を憎むのである。
あさましう 05140
その短さにあきれて言葉もでない様子。
なかなかなり 05140
かえって逢わない方がよかったとの注釈があるが大間違いだ。あまりに短い逢瀬ゆえ満たされぬ思いがさらに強まったこと。逢うことで気持ちが落ち着くはずであったという意識がその下には働いているわけだ。