さても 嵐吹く尾の 若紫08章06
原文 読み 意味
さても
嵐吹く尾の上の桜散らぬ間を心とめけるほどのはかなさ
いとどうしろめたう とあり
05126/難易度:☆☆☆
さても
あらし/ふく/をのへ/の/さくら/ちら/ぬ/ま/を/こころ/とめ/ける/ほど/の/はかなさ
いとど/うしろめたう と/あり
それはそうとしても、
《嵐が吹く地の峰の桜が 散らない間だけ 心をおとめになるという愛情のはかなさよ》
ますます気がかりで」とある。
さても
嵐吹く尾の上の桜散らぬ間を心とめけるほどのはかなさ
いとどうしろめたう とあり
大構造と係り受け
古語探訪
さても 05126
ニュアンスはわかりにくい。そうであってもの意味で、話題転換と取っておく。
心とめける 05126
光の歌「面影は身をも離れず山桜心のかぎりとめて来しかど」の「心のかぎりとめて」を受ける。山桜(紫)を心にとめての意味Aであって、諸注釈の説く、山桜のもとに心をとめるBのではないと前回説明した。桜の花が散らない間だけ心とめるとは、桜を心にとめること、すなわちAの解釈を受けての返歌だ。また、桜を散らないようにとめて来たけれどとの裏の意味が必要であることを説いたが、「散らぬ間」という表現はこの裏の意味を受けている。
うしろめたう 05126
光の「うしろめたくなむ」をそのまま返した言葉。そんな短い期間しか愛していただけないあなたの愛情が心配ですとの意味。こういう恋のやりとりは、先ずことわるのが筋。相手の愛情の薄さをなじり、もっともっと強い愛を呼び込むのである。愛情の深さが歌に読み取れなければ、恋愛はそこでストップとなるわけだ。