飽かず口惜しと言ふ 若紫06章18
原文 読み 意味
飽かず口惜しと 言ふかひなき法師 童べも 涙を落としあへり まして 内には 年老いたる尼君たちなど まださらにかかる人の御ありさまを見ざりつれば この世のものともおぼえたまはず と聞こえあへり
050104/難易度:☆☆☆
あかず/くちをし/と いふかひなき/ほふし わらはべ/も なみだ/を/おとし/あへ/り まして うち/に/は とし/おイ/たる/あまぎみ-たち/など まだ/さらに/かかる/ひと/の/おほむ-ありさま/を/み/ざり/つれ/ば このよ/の/もの/と/も/おぼエ/たまは/ず と/きこエ/あへ/り
名残惜しくてならないと、ひと数にも入らぬ法師や童たちまでもが、涙を落とし合った。ましてや、坊内では、年老いた尼君たちなどが、これまでまったくこんな高貴な方のご様子を見た経験がなかったので、「この世の存在とも思えません」と申し上げあった。
飽かず口惜しと 言ふかひなき法師 童べも 涙を落としあへり まして 内には 年老いたる尼君たちなど まださらにかかる人の御ありさまを見ざりつれば この世のものともおぼえたまはず と聞こえあへり
大構造と係り受け
古語探訪
言ふかひなき法師 05104
わきまえのない法師の意味ではない。「言ふかひなし」は、取るにたりないの意味で話者の評。具体的には身分の低さ、能力の低さなどを表すが、とりたてて言うに当たらないほどの意味である。
まして 05104
「聞こえあへり」にかかる。法師や童べが「あかず口惜し」と言ったのに対して、「まして」尼君たちなどは「この世のものともおぼえたまはず」と言い合ったのである。