過りおはしましける 若紫03章02

2021-04-28

原文 読み 意味

過りおはしましけるよし ただ今なむ 人申すに おどろきながら さぶらべきを なにがしこの寺に籠もりはべりとは しろしめしながら 忍びさせたまへるを 憂はしく思ひたまへてなむ 草の御むしろも この坊にこそ設けはべるべけれ いと本意なきこと と申したまへり

05046/難易度:☆☆☆

よきり/おはしまし/ける/よし ただいま/なむ ひと/まうす/に おどろき/ながら さぶら/べき/を なにがし/この/てら/に/こもり/はべり/と/は しろしめし/ながら しのび/させ/たまへ/る/を うれはしく/おもひ/たまへ/て/なむ くさ/の/おほむ-むしろ/も この/ばう/に/こそ/まうけ/はべる/べけれ いと/ほい/なき/こと と/まうし/たまへ/り

「通りすごしになられましたよし、ただ今になって人が申します、あわてて参上いたすべきところ、わたくしめがこの寺に籠っていますのをご存知であられながら、秘していらっしゃるのを、遺憾に存じましてつい。ひなびたものながら御座所をも、こちらの僧房にご用意いたしますのに。まったく残念なことで」と弟子を通して申された。

過りおはしましけるよし ただ今なむ 人申すに おどろきながら さぶらべきを なにがしこの寺に籠もりはべりとは しろしめしながら 忍びさせたまへるを 憂はしく思ひたまへてなむ 草の御むしろも この坊にこそ設けはべるべけれ いと本意なきこと と申したまへり

大構造と係り受け

古語探訪

過り 05046

僧都の前を通り過ごして、聖のもとへ行ったこと。室町時代以前は「よきる」と濁らない。

おどろきながら 05046

聖が光を迎えたときも、「驚き騒ぎ」とあった。貴人を迎えるときに使われる一種の誇張表現であろう。

さぶらふべきを 05046

参じなければならないがそうはしない、その理由は以下で述べる。

なにがし 05046

自称。

思ひたまへてなむ 05046

「さぶらはざる」なんかが省略されている。

草の御むしろも 05046

粗末ながら、君のおやすみになる御座所もの意味。

申したまへり 05046

「たまへ」は弟子でなく、僧都の言葉であるとの意識から、語り手が僧都に対して敬意をこめている。

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