生ひ立たむありか 若紫02章16
原文 読み 意味
生ひ立たむありかも知らぬ若草をおくらす露ぞ消えむそらなき
05039/難易度:☆☆☆
おひ/たた/む/ありか/も/しら/ぬ/わかくさ/をおくらす/つゆ/ぞ/きエ/む/そら/なき
生い育ち嫁ぐ先もわからぬ若草の少女を、残して消えてゆく身の露は消えようにも消える気持ちも場所もありません
生ひ立たむありかも知らぬ若草をおくらす露ぞ消えむそらなき
大構造と係り受け
古語探訪
生ひ立たむありか 05039
将来成長した後に住む場所。要するに夫をさす。ここで注意すべきは、紫の上は、光に正妻扱いされず、いわゆる据えられたために、その後の苦労をしたと論じられてきている。それはそれで正しいのだが、紫の親族はこの尼君しかいないのだから、光でなくても、将来、夫ができたときに、よしんば尼君が生きていても、ここへ通わせるわけにはいかない。すなわち、紫の結婚形態は「据え」という形しか初めからないのである。光の仕打ちが悪いのではなく、これは両親のいない紫の運命なのである。だからこそ、祖母である尼君は心配でならないのだ。「そら」は露が消えて行く先の意味だけでなく、身空の空のように気持ちの意味がある。安心して死ねない気持ちであるの意味。