君何心ありて海の底 若紫01章20

2021-04-26

原文 読み 意味

君 何心ありて 海の底まで深う思ひ入るらむ 底の みるめ も ものむつかしうなどのたまひて ただならず思したり

05020/難易度:☆☆☆

きみ なにごころ/あり/て うみ/の/そこ/まで/ふかう/おもひ/いる/らむ そこ/の/みるめ/も もの/むつかしう など/のたまひ/て ただ/なら/ず/おぼし/たり

君は、「どんなつもりで、海の底までなどと、そんなに深く思い詰めているのだろうか。水底のみるめもとんだことだし、見た目もとんだことになる」などとおっしゃって、特別な関心をお持ちになる。

君 何心ありて 海の底まで深う思ひ入るらむ 底の みるめ も ものむつかしうなどのたまひて ただならず思したり

大構造と係り受け

古語探訪

深う 05020

海の底深くと、深く思ひ入るの両方にかかる和歌の手法。

底のみるめもものむつかしう 05020

身投げした女にからまって、海底のみるめ(海藻の一種)も厄介だろうの意味と、身投げしては見苦しいことになるの意味をかける。両意をかけるのはやはり和歌の手法。みるめも雅語である。なお、「そんな思いつめている娘では見聞きする感じもわずらわしく面倒だ」の意をかさねるとの注があるが、それでは、光が特別な関心をもったという後のくだりと矛盾する。「ものむつかし」は、 「みるめ(見た目)」ではなく、「底のみるめ(溺死体のみた目)」。見た目が悪いだろうでは、海の底まで深う思ひ入るらむ、とも続かない。ひどいものだ。

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