やや深う入る所なり 若紫01章02

2021-04-26

原文 読み 意味

やや深う入る所なりけり 三月のつごもりなれば 京の花盛りはみな過ぎにけり 山の桜はまだ盛りにて 入りもておはするままに 霞のたたずまひもをかしう見ゆれば かかるありさまもならひたまはず 所狭き御身にて めづらしう思されけり

05002/難易度:☆☆☆

やや/ふかう/いる/ところ/なり/けり やよひ/の/つごもり/なれ/ば きやう/の/はな/さかり/は/みな/すぎ/に/けり やま/の/さくら/は/まだ/さかり/に/て いり/もて/おはする/まま/に かすみ/の/たたずまひ/も/をかしう/みゆれ/ば かかる/ありさま/も/ならひ/たまは/ず ところせき/おほむ-み/に/て めづらしう/おぼさ/れ/けり

そこはやや山へ深く入ったところだった。三月の末なので、都の花盛りはどこも過ぎていたが、山の桜はまだ盛りで、山に分け入って行かれるうちに、霞のかかる景色も興味深く目に映るため、こんな景色にも見慣れておられない窮屈なご身分ゆえ、ものめずらしお気持ちになられた。

やや深う入る所なりけり 三月のつごもりなれば 京の花盛りはみな過ぎにけり 山の桜はまだ盛りにて 入りもておはするままに 霞のたたずまひもをかしう見ゆれば かかるありさまもならひたまはず 所狭き御身にて めづらしう思されけり

大構造と係り受け

古語探訪

やや深う入る所なりけり 05002

主語をなにがし寺とするが、それでは、「入りもておはするままに」と時間が逆行する。今自分たちのいる所はやや山深いところだったの意味で、なにがし寺へ行く道中の描写である。都から突然、中に場面を転じるとともに、ナレータの位置(語り手は第三者の立場から光のことを語っている)から、登場人物の立場からの独白(「なりけり」は語り手の感想)へと転じたところにこの文の魅力がある。物語に一気に突入してゆくことになる。

所狭き 05002

窮屈。自由行動が規制されているため、こんな山中に来た体験がないのである。

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